Asahi Transnational

    
 
2020-10-29

[3D SCAN] ハンディ式非接触三次元測定機(3Dスキャナー)
導入事例:タイ 鍛造工場

3D Scan Case Study Forging Plant

 

最近の非接触三次元測定機(3Dスキャナー)は多種多様で機能や精度が向上しているだけでなくPCの性能向上もあり、より利用価値が高いものになっています。そのためこれまで製造業では利用部門が限られていた小型のハンディ式3Dスキャナーも品質管理部門等で充分に活用されてきております。今回タイでは比較的早い段階に小型で利便性があるハンディ式3Dスキャナーに着目され、ご導入された日系鍛造業のお客様から改めてお話を伺う機会がありましたのでご紹介させて頂きます。

 

Yanagawa Techno Forge (Thailand) Co.,LTD.社(YTT社)について

1989年よりパトムタニ工場にてハンマー鍛造を開始し、その後2輪車用クランクシャフトのプレス鍛造&熱処理を開始。1997年には柳河精機グループに参入、4輪エンジン用バルブロッカーアーム・4輪車用ホイールハブのアメリカ輸出も手掛け業務拡大を遂げ2006年に会社名を現在のYanagawa Techno Forge (Thailand) Co.,Ltd.に変更、自動車エンジン部品等の強度を必要とする重要部品の熱間鍛造を行う「鍛造プロ集団」として、生産活動を行っています。

 

鍛造金型部門の仕事

鍛造(たんぞう)業とは金属を高温に熱し叩くことにより成型していく製造方法です。刀の製作や鍛冶屋をイメージされると理解が容易かと思います。YTT社ではその中でもハンマー鍛造と呼ばれる叩いて圧力を加え成型していく方式で製造しています。鍛造ではその製造方法から金型寿命は短く、鋳造の1/10~1/20程度の約5000回程度しかありません。そのため金型改修の頻度が高く、YTT社では毎月数十型は改修するため、ほぼ毎日金型を交換されています。当然ながらきちんとした金型形状の品質が維持できていないと良品がとれないということになり、金型部門の負荷が高い業種といえます。

 

弊社とのつながり

YTT社が3Dスキャナーを導入する以前は必要時に弊社に3Dスキャニングや三次元形状評価、三次元モデリング作業を依頼して頂いてました。ある日、3Dスキャンデータをもとに金型3Dモデルを作成し、上型と下型をソフトウェア上でアセンブルするとどうしても1mm程度ずれてしまう問題がありました。金型で1mmのずれは大問題ですので作成した3Dモデルを念入りに再確認しますが原因が特定できません。3Dスキャン時に座標原点がずれた可能性を疑い、もういちど3Dスキャンをやり直しさせて頂くため問題点を隠さず正直にお客様に話したところ、返答は「モデルはそれでいいんです」でした。ハンマー鍛造の金型では偏心した型彫りを持つ場合、打撃の際にモーメントが発生し上型がズレるためその分をあらかじめ見込んだ金型設計がされていることなどを教わりました。

 

非接触三次元測定機(3Dスキャナー)を導入

2015年1台め導入
YTT社では大手日系二輪車メーカーとの取引にあたり、三次元形状評価による品質管理を本格的に導入していくことになりました。そのメーカーは弊社の非接触三次元測定機ユーザー様でもありました。弊社では通常、お客様の納品先の利用機器、必要公差、製品形状を総合的に勘案して3Dスキャナーをご提案していますが、当時は2タイプの測定機を選んで持ち込み、製品デモをしました。 その1つであった小型の手で持つハンディタイプの3Dスキャナーは持ち運びの利便性が良く、金型を動かす必要がなくその場所で測定できます。精度も充分でしたのでそのスキャナーを採用となりました。手軽で簡単な操作、測定前の準備もほとんど必要ないためYTT社スタッフの方も導入当初から積極的に利用されています。マネージャの方によるとこれが選んで一番良かった点とのことでした。実際に三次元での形状確認は非常に便利で、起点、交点、角度などこれまでできなかった測定が可能になり、狭い形状、R形状など他の測定ツールでも困難だった検査が可能になりました。もちろんですが、鍛造金型の手作業による修正を3Dスキャンによりデータ化してモデルに反映、改修履歴を保存する点でも役立ちました。

 

2020年2台め導入
新製品の生産開始にあたり、既存の三次元測定機(CMM)では測定が不可能な形状があり三次元形状評価のさらなる必要性が生じました。既にハンディ式3Dスキャナーの利便性が社内で浸透していたため同じメーカーのものが2台目として導入されました。この2台めの3Dスキャナーは新モデルで、スキャン速度や解像度がより進歩しておりユーザーの方はその速さに驚いていました。さらにソフトウェア機能も増えたため、これまで3Dスキャンおよびその後のデータ修正作業を含めると1日かかっていた作業が30分になりました。

 

新しい3Dスキャナーによる時間短縮効果
· 新スキャナーは光沢面でもスプレー吹付けが不要なため時間短縮 (15分→0分)
· 自動表面生成で時間短縮(3時間→20分)
· 自動穴埋めで時間短縮(2時間→10分)
· ファイナライズ機能で時間短縮(30分→5分)
· コマンド増加による時間短縮

 

1日作業となるとなかなかユーザーも時間がとれませんが、短時間になったこともあり利用がさらに広がります。そこで、もともと持ち運びの利便性が高いハンディ式3Dスキャナーですが、今は測定室の一箇所にスキャナーを置いて専用の作業場所を準備しており、いろいろな部署から必要時に来て利用してもらうような形で運用されています。

 

Asahi Transnational Company Limited社について

2009年設立。三次元データを活用したエンジニアリング製品やサービスを販売。
三次元データを活用したさまざまなエンジニアリング製品およびサービスを主にタイの製造業のお客様にご提供しています。 3Dエンジニアリングの製品は最新の技術を取り入れたものが多く、時には業務を劇的に変化させます。エンジニアの方々を中心としたお客様を生産性の低い仕事から解放し、新しい挑戦をする努力や勇気をサポートさせて頂くことが私達の仕事と考えています。

 


 

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